WEST.としての活動はもちろん、『小さい頃は、神様がいて』『未来のムスコ』など俳優としてもさまざまな作品で輝きを放ち、『エレファント・マン』で第28回読売演劇大賞優秀男優賞と杉村春子賞を受賞するなど舞台での評価も高い小瀧望。この夏は、2022年に『開運!なんでも鑑定団』を通して発見された、井上ひさしが24歳の時に手掛けた戯曲『うま-馬に乗ってこの世の外へ-』で主演を務める。これまでのパブリックイメージとは180度違う、清々しいまでの悪漢に挑む小瀧に、本作に注ぐ意気込みや、まもなく迎える30代への思いを聞いた。
◆井上ひさしの幻の戯曲で主演 舞台となった山形訪れ役作り
東北の民話「馬喰八十八(ばくろうやそはち)」をベースにし構築された本戯曲。主人公の太郎は馬地主をはじめとする村の男たちをだまし彼らの金をとことん巻き上げ、さらに出会う女は全て虜にして捨てていく。自らの弁舌と才覚だけを信じ、信仰も否定し、胸がすくほどの極悪ぶりで、閉鎖的なムラ社会と常識を破壊していく太郎の姿が、24歳の井上の若々しく生命力あふれた筆致で描かれていく。
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演出の藤田俊太郎のもと、小瀧のほか、音月桂、加藤梨里香、安井順平、梅沢昌代ら実力派キャストが観る者を可笑しくも哀しい人間模様へと誘う。
――小瀧さんのイメージとは正反対の太郎役。お話を聞かれた時のお気持ちはいかがでしたか?
小瀧:うれしかったですね。舞台でもドラマでもいい人の役が続いていたので、早くバランスを取りたかった感じがしていたんです。今回は徹底的に最後まで自分のことしか考えていないような悪い役なので、お話をいただいた時はもう飛びつくような思いでした。
――バランスを取りたいというのは?
小瀧:僕はそんないい人じゃないですよっていうのもありますし(笑)、役者としてもいろんな役に挑戦してみたいという思いもありました。舞台で日本の昔のお話をやるのが人生で初めてなので、そういう意味でもターニングポイントになりそうだとすごく感じましたし、久しぶりにストレートプレイに挑戦できるというのも僕的には大きかったですね。
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20代ラスト、30代を迎える時に、井上ひさしさんの作品で、しかもずっとご一緒したかった藤田さんの演出で、ずっと立ちたかったPARCO劇場でということで、条件がそろいすぎていて。難しいこともめちゃくちゃあるんでしょうけど、それさえも楽しめるんじゃないかなという思いがあります。挑戦になるんだろうなっていう予感もしていますしプレッシャーもありますが、ワクワクも大きいです。
――インスタにも投稿されていましたが、物語の舞台であり、井上さんの故郷でもある山形県川西町へ一人旅で足を運ばれたとか。
小瀧:作品とは時代も何もかも全然違うと思いますけど、行ける距離なら足を運んで何かを感じたいと思ったんです。実際に行ってみると、すごい盆地で、山に囲まれて、結構閉鎖的な空間なんだなって思いました。この山を越えるのはきついなと実感しましたし、疎外感も感じて。この『うま』に詰まっている太郎自身の生きづらさや、ストレス、コンプレックスみたいなものも体感できたので、本当に行ってよかったなと思います。
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川西町は小高い丘から見渡す景色が素晴らしくて、食べ物もおいしくて本当にいいところでした。お米も買って帰りましたし、お酒もおいしかったので実家に送りました。
――インスタの投稿には岡本健一さんから、実際に現地まで出かけるその姿勢が素晴らしいと絶賛のコメントが送られていました。
小瀧:神様からコメント来た!って(笑)。本当にもったいないお言葉をいただいて…。プレッシャーでしかないですけど、僕も演劇が好きな人間として、やっぱりこの『うま』という作品を小瀧に任せてよかったと思っていただけるように、頑張らないといけないなと改めて思いました。
◆とことん悪い太郎に共感する部分も「遠いようで結構近いような…」
――解禁されたビジュアルもこれまで見たことのない悪い表情の小瀧さんで大反響でした。
小瀧:この撮影の時は、嘘みたいないい人の“まー先生”をやっていた時だったので、僕的には刺激的で楽しかったです。
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藤田さんがまずご自身でテストしてくださったんですけど、それが公開してほしいくらい素晴らしくて!(笑) 参考にしながらやらせていただきました。その時にものすごい知識量と熱意でブワーッと本作への思いをたくさんお話してくださったのですが、とても優しくて博識な方なので、真摯に作品に向き合いディスカッションを重ねながら作り上げていくことが楽しみです。
――藤田さんとのタッグを熱望されていたとか。
小瀧:俳優の東啓介くんと友達なのですが、とんちゃん(東)も藤田さんのことが大好きで信頼がありますし、『DEATH TAKES A HOLIDAY』というミュージカルをやった時に一瞬お会いできたんですよね。あと読売演劇大賞を受賞した時に同じテーブルだったんです。ほとんど知り合いがいなくて温かいお茶を飲んでるしかなかった僕に、藤田さんがすごく話しかけてくれたのはめっちゃ覚えています。その時からご縁が始まっていたのかなと思うと、すごく感慨深いです。
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――そんなお二人で太郎という役を作り上げていくわけですが、太郎というキャラクターはどんな人物だと捉えられていますか?
小瀧:清々しかったです。ここまでいったらもうカッコいいなと思っちゃいました。もしかしたら不快に思う方もいるかもしれないですし、本当にいたら嫌なやつですけど、むしろここまで突き抜けていたら、なんか気持ちいいなって。最後のセリフも太郎を全うしているというか、めちゃくちゃ太郎っぽい終わり方で。僕はこういう生き方をできないので憧れます。
ただの悪人じゃないんですよね。悪を悪と思っていない、だって生きるためにはこうするしかない、みたいなものがあって。あまり平面的に見ないようにしないといけないなと思っています。
――小瀧さんご自身の中に、太郎に共感する部分はありますか?
小瀧:えー! …ある気がする。なんか遠そうで結構近いような…。難しいな。自分の人生にややコンプレックスを抱く部分があるところは太郎に共感できる部分ですかね。
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自分もこうなりたかったなという憧れが大きいです。今更なれないじゃないですか。こういうご時世でこんな生き方していたら大バッシングですもんね(笑)。でも、こんな生き方をしてみたかったなって思う部分はあるので、それを舞台で思いっきり、激しく心臓を鳴らしながら全力で生きたいと思いますね。
台本を読んだ時に今まで読んだ台本で一番生気を感じられたんですよ。体温がすごく台本に残っているというか、それぐらい躍動感があって。これぐらい破天荒な激しい人生もいいよな、最後の最後まで徹底的に人を騙していく姿っていうのはかっこいいなと思っちゃいましたね。
生命力にあふれていて、しかもちゃんと女好きなところもいいですよね。全部乗せみたいな。欲張り、強欲、薄情、最高!みたいな(笑)。すごく楽しみでワクワクしています。
――周囲の皆さんの反応はいかがでしたか?
小瀧:メンバーでは濱田(崇裕)が僕の舞台を皆勤賞で観に来てくれているので、今回も観に来てくれたらうれしいです。あと、母が「嘘つき太郎ちゃん、嘘つき太郎ちゃん」ってすごく楽しみにしているんですよね(笑)。
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◆太郎からいい影響を受けて、30代は肩を振り回して実りのある時間にしたい
――井上ひさしさんの戯曲にはどんな印象を持たれましたか?
小瀧:言葉が本当に美しいなって思いました。言葉の魔術師と呼ばれるのがよく分かります。
ただ、セリフ量がすごいので、覚えられるかな?という不安もありますね。
――いつもどこでセリフを覚えるんですか?
小瀧:家の中をウロウロしながらとか、行き帰りの車でも予習復習しています。メンバーのいる楽屋はうるさいんで覚えられないです。濱田とかずっと中身のないことを喋ってるんで気が散るんですよ。
――(笑)。悪事に手を染める点は置いといて、太郎は、口八丁手八丁で男性も女性も虜にしていく魅力あふれる人物です。WEST.のメンバーの中で、この人の言ってることについつい惹き込まれてしまうなという方はどなたでしょう?
小瀧:……桐山(照史)じゃないですか? 商売人なんでね、魂が。照史がオススメするご飯屋さんとか絶対行っちゃいますね。それで間違いなく美味いんですよ。濱田に美味しいお店とか聞いたことないです。
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あとは、藤井(流星)にプレゼンされたものは、逆に信用がない(笑)。オススメの面白いアニメとかも、これこれこんなんで面白いって言われても「へえ~」って言って観ず、たまたま別の機会に観て「めっちゃ面白かったよ」って言ったりとか。なんかいろんなタイプがいるんですよね、僕たち(笑)。
――先ほどもお話がありましたが、東京公演が終わり大阪公演までの間の7月30日に30歳のお誕生日を迎えられます。振り返ると20代はどんな時代でしたか?
小瀧:20代は……我慢。我慢ですかね。特に20代前半は伸び悩んだなっていう、それがコンプレックスでもあります。20代後半から「これだ!」っていう自分の好きなことを見つけて、年1本作品をやらせてもらって、そのほかにドラマも出させていただいてすごくありがたかったですけど、もうちょっと行きたかったなっていうのが20代の思いです。
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――30代はどんな小瀧さんを見せていきたいですか?
小瀧:太郎ってカッコいいな、生きたいように思いっきり生きて素敵だなと思うので、太郎からいい影響を受けて、個人としてもグループとしても、もうツーステップ、スリーステップ、成長できたらなって思います。
僕、今すごく肩がこんな(振り回す)になってるんですよ。「よっしゃ!やるぞ!」みたいな。人生の先輩とご飯を食べた時に「あんまり頑張りすぎない方がいいんじゃない?」って言われたので、まあまあ楽な気持ちで真摯に向き合い続けようと思うんですけど、それでもこう(肩を振り回す)なっていくと思うので実りのある時間にしたいですね。
(取材・文:近藤ユウヒ 写真:高野広美)
PARCO PRODUCE 2026『うま-馬に乗ってこの世の外へ-』は、東京・PARCO劇場にて7月8日~28日、大阪・SkyシアターMBSにて8月6日~12日上演。
※濱田崇裕の「濱」は旧字体が正式表記
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