シェイクスピア作『ハムレット』と、シューベルト作曲『冬の旅』。時代も文化も異なる2つの作品が1つの舞台で交錯する。東出昌大が演じるのはデンマーク王子ハムレット。栗原英雄が演じるのは『冬の旅』を生み出す作曲家。この異色の「共演」が実現するのが『ハムレット、冬の旅 HAMLET’S WINTER』だ。2つの作品、そして2人の俳優が出会うことで、舞台上にはどのような化学反応が生まれるのか――。本作が初共演となる東出と栗原に、作品への思いや現在の心境を聞いた。
■栗原英雄、本作は「率直に相当難易度が高い」
――本作への出演オファーを受けた際、どのようなお気持ちでしたか?
東出:私がトータルステージプロデュース(tsp)のお2人、福島(成人)さん、毛利(美咲)さんとご一緒するのは、三島由紀夫の『豊饒の海』(2018年)、『サド侯爵夫人』(2026年)に続いて、今回が3度目となります。業界の尊敬する先輩として、お2人が格好良い作品を創ろうと標ぼうしていることを存じ上げていたので、私に白羽の矢が立ったと聞き、二つ返事でお受けしました。今はまだ、作品の全体像を把握できていませんが、「すごいものになりそう」という予想のもと、参加させていただきます。
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栗原:ある日、こういう企画があると聞きまして、最初に音源が送られてきました。曲数も20曲以上あり、ハムレットとシューベルトを合体させて、そこへ松本隆さんの詞が加わり、率直に「これは相当難易度が高い」と感じました。私に求められているものも、オペラではなく「舞台俳優としての声と歌が欲しい」と言われ、悩んだのですが、これは「もっと挑戦しよう!」というお誘いだと解釈し、お引き受けしました。後に東出さんがハムレット役と聞き、彼ならばたたずまいだけでハムレットを体現できると直感したので、あとは私自身がどうシューベルトと向き合うか? だと考えています。
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――創作に関して、現時点で耳にした情報やヒントはありますか?
栗原:例えばハムレットは、観ている方によって受け止め方がさまざまですよね。若き日の自分の姿と重ねられるかもしれないし、人間の葛藤を強く感じるかもしれない。
東出:(頷く)
栗原:そういう余白を残しておくといいよね、という話はしました。観ている方に委ねるのが一番良いんじゃないかな。そのハムレットとシューベルトがどう繋がるか? は興味深いですよね。
東出:私が為すべきことは、料理に例えると「食材」。演出家というコックさんが多彩な食材をどう調理するか? だと思っていて。今回、福島さんと毛利さんが任命したコックさんが首藤(康之)さんですので、私は良い食材として良い芝居をすることだけを念頭に、稽古に臨むつもりです。そういう意味では、あまり考え過ぎずノーガード戦法で行こうかなと。
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■東出昌大、ハムレットに「非常に高い親和性を感じます」
――シェイクスピアの『ハムレット』やシューベルトの『冬の旅』について、どのような印象をお持ちですか?
栗原:すごく耳に残るメロディもあるし、順番に聞いていくと1つの物語になる印象があります。なので、(今回のポイントは)いかに言葉を大切にして、メロディも崩さず、そこから生の人間を感じ取ってもらうか、ですよね。だからこそ難しいと思いますが。
東出:ハムレットは放浪をしながら、ずっと考え続け、悩み抜いている。それが『冬の旅』の荒涼とした旋律と合うのかな、と思います。非常に高い親和性を感じますね。私自身は、シューベルトの内省的な一面やハムレットの放浪し続ける人生に共感でき、それらが集合した時に何が起きるのか? と期待しています。冬の訪れを感じるような、ワクワクできる演劇作品になるんじゃないかな。そして、私は演出家の首藤さんと2度ほど共演していて、首藤さんの、人生のすべてを注いだやや狂気的とも言えるバレエへの傾倒や、美に対する執着などを間近で見てきました。そういう首藤さんの創作姿勢が、シューベルトとシェイクスピアの邂逅(かいごう)に繋がると信じています。おそらくこれ、きつい作業になるはず。
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栗原:きっとそうでしょうね。
東出:はい。でも、きついことと向き合う覚悟はあるので、楽しみです。
――松本隆さんの訳詞・言葉も楽しみにしています。松本さんについて、どのようなイメージがありますか?
東出:私自身は世代も少し異なるのですが、一時代を築いた人というイメージです。万人の心に響くという点はシェイクスピアとの共通項ですし、そういう文学性……という言葉が正しいかどうか分かりませんが、奥行きのある、普遍的な魅力を放つ言葉だと思います。
栗原:松本先生の訳詞を読みましたが、すごく頭に入りやすい言葉でした。だからこそ、シューベルトの曲に合わせて、クラシックの音階に(歌詞を)はめていこうとすると、すごく難しい。今のところ「さて、どうしたものか…」という心境です。松本先生の大切な詞をシューベルトの曲と喧嘩させてはいけない。役者としてどう埋めていくか。(上を見上げて)今すごく、頂上が遠くに見えています。
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――これからどう攻略しましょう?
栗原:松本先生の詞を活かすには、気持ちは勿論のこと、テクニックを駆使しないといけない。音楽稽古で演出家としっかりすり合わせをして、詞と曲を最大限活かしたいですね。60代の私にとってオンタイムの作詞家ですから。非常に楽しみです。
■東出昌大「鉄人ぞろい」の座組に奮い立つ
――この公演に関して、お2人が「互いに期待すること」は?
栗原:うーん……。あまり期待し過ぎるのもねぇ。
東出:ですよね(笑)。
栗原:先ほど東出さんが仰ったように、私たちは食材として、素材の良さを高めておきたい、という気持ちはあります。調理しやすいように。おいしくなるために。
東出:私はハムレットを演じるのですが、例えばストレートプレイのハムレットのように、台詞の応酬で言葉が紡がれるわけではなく、栗原さん演じる作曲家がそこにいて、ストレートプレイとは異なる方法で言葉をもらい、それを受け止めたハムレットが言葉を発する。そこに期待したいし、相手が栗原さんですから、とても楽しみです。
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――俳優として、お互いの印象は?
栗原:今回が初めましてになるけれど、これだけの雰囲気を持っていますから。
東出:いえいえ(笑)。
栗原:芝居は相手からもらったものから生まれてくるので、それを大事にしたい。なので今、東出さんの芝居に対するアプローチの仕方や感覚が自分と同じと分かり、安心しました。
東出:栗原さんは、劇団四季に入られて、長い間、浅利(慶太)さんの元で活動されていました。劇団四季を出られ、ご自身の芸能活動を重ねてこられた。ですので、私よりずっと長く鍛錬をされてきた鉄人だと思っています。首藤さんも同様で、首藤さんはバレエにおける鉄人。この座組はそういう鉄人ぞろいで、私は皆さんの風圧になぎ倒されぬよう、しっかり屹立(きつりつ)できるよう努めます。
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――最後に、この記事を読んでいる方々へ作品のPRを一言お願いします。
栗原:やはり「この誕生にお付き合いくださいませんか?」ということですよね。お客さまは作品創作の目撃者ですから。ぜひ一緒に『冬の旅』へ向けて旅立ちましょう。劇場でお待ちしています。
東出:仮に私がハムレット役ではなかったとしても、この座組、この演出家、このプロデューサーの公演であれば、絶対観に行きます。新しいものの誕生ですし、すばらしい作品になると信じています。その上で、自分がハムレットをやるのだから、めちゃめちゃいいものにしたい。頑張ります!
(取材・文:園田喬し 撮影:篠塚ようこ)
舞台『ハムレット、冬の旅 HAMLET’S WINTER』は、11月20日~30日東京・新国立劇場 小劇場、12月12日・13日大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。
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