11月より全国を巡るワハハ本舗の特別公演がスタートする。第一報で発表された『遺作』から『エンド』へと何やら不穏な仮タイトルの変遷を経て、最終的に『最後のショービジネス』と正式タイトルが決まった本公演。40年を超える劇団歴を誇る佐藤正宏、柴田理恵、梅垣義明、そして座長の大久保ノブオの4名に、主宰・喰始が命名したタイトルへの思いや本公演の見どころを語ってもらった。
◆『最後のショービジネス』に込められた喰始の思い
主宰・演出の喰始が「大劇場での、大舞台でのショービジネス公演は年々難しくなって来ているのが本音だ。コンサートでもない、ミュージカルでもない、お笑いライブでもない、ワハハならではのショービジネスはこれが見納めと思って見に来て欲しい。本気である」と呼び掛けるなど、ファンにとっては胸騒ぎを抱えながら迎える本公演。タイトルは、和田誠さんの本にあった日劇を巡るエピソードからインスパイアされて付けられたものだという。
――『遺作』⇒『エンド』と来て『最後のショービジネス』。どうしても「最後」が気になり胸騒ぎしてしまうのですが…。
柴田:喰さんは覚悟を決めたかったんだなと思いました。「もうこれが最後っていう気持ちでやるんだ!」っていう。そんな中で和田誠さんの本を読んで、「日劇ってあったな。あれは楽しかったな」「今ってバレエやミュージカルといった1つのジャンルの公演はあるけれど、歌があって笑いもあってといういろんなものが詰まったバラエティーショーみたいな舞台ってないな」という思いから、「最後のショービジネス」というタイトルに行きついたんだと思います。
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大久保:喰さんと呑んでいる時に「タイトルをどんどん変えていく」というアイデアを聞いたのですが、「きっと胸騒ぎする人が結構いるよ!」って言っていたんです。ここにいましたね(笑)。きっと喰さんも喜ぶと思います。
佐藤:思うツボだったね(笑)。ちなみにどういう胸騒ぎだったんですか?
――『遺作』ということはもう観られないのか?『エンド』というのはどういう“エンド”なのか?『最後のショービジネス』というのは“ショービジネス”が“最後”なだけでほかの形ではまだまだ続くのか?と…。ファンとしてはこれが最後にならないように思いっきり楽しんで、まだまだ続けていただきたい思いです。
柴田:ありがとうございます。私たちも別に最後とは思っていないので、お客さんにたっぷり笑っていただけるように今自分たちができる全力を尽くしたいと思っています。
――皆さんはタイトルを聞かれた時はどんな印象でしたか?
佐藤:“最後”という文字がまた出てきたなって(笑)。
日劇といっても今の人には分からないと思いますけど、有楽町に「日劇」という大きな劇場があって、娯楽の殿堂だったんですよね。「若い時にそこでいろんなものを観て育って、今こうなっている」っていう喰さんの思いが込められているんじゃないんですかね。自分が面白いと思ったものをもう1回みんなに観てもらいたい、そういうものを作りたいっていう。
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柴田:喰さんはパリのムーラン・ルージュも好きなんですよね。あそこは裸があったりと大人っぽいから、それで裸タイツを考え出したり。きっとああいうショーがやりたくて、心が騒いだんだろうね。
梅垣:自分が観て楽しかったショーをいつかやりたいっていう思いがずっと残っていたんでしょうね。喰さんの本当にやりたいことなんだっていうのは伝わってきます。
柴田:いろんな演劇のジャンルがあって、すごく考えさせられたり、感動したり、いろんな楽しませ方はあるけども、喰さんがやりたいワハハっていうのは、浮世を忘れてアハハ!と笑って、「あぁ~楽しかった!明日からまた頑張ろう!」って思える、そういう瞬間をやりたいんですよね。我々はそういう集団なので、そのジャンルで突き進んで、最後までそこでやり続けるというのは大事なのかなと思います。
大久保:喰さんはショービジネスという言葉にずっとこだわりがあって、以前『喰始のショービジネスの作り方』っていうお笑いライブをずっとやっていたんです。なので今回のタイトルに決まったと聞いた時に、腑に落ちたというか、喰さんっぽいなと思ったんですよね。喰さんの好きな言葉でこだわっている世界を表現していて、公演ビジュアルもなんか懐かしい感じがする。なんか昔のワハハってこうだったよなっていう感じがして、僕は好きですね。
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梅垣:いろんなところにこのポスターが並んでますけど、アートとしてクオリティは低いかもしれないけど、やっぱり目立つんですよ。何のポスターかよく分からない感じで。
佐藤:“チラシ”って感じでね。
『最後のショービジネス』っていうのも、なんか、MGMのミュージカル映画のタイトルみたいでいいじゃないですか。おバカで、ゴージャスで、「もういいじゃないですか!パッと行きましょう!」みたいなね。
◆稽古の中でネタを創り上げていくのは発明の感覚
――稽古を重ねる中で今回披露するネタが決まっていくとのことですが、現時点でこんなことをやりたいという構想はお持ちですか?
柴田:講談が面白かったからやってみたいんですって言ったら、喰さんに「講談はしゃべりだけの一人芝居だから、今回は大勢でやるのはどうだ?」と言われたんですよね。私が講談をしている後ろでみんながちゃんと演技をするような形になるのかな。それが徐々に私がしゃべったストーリーからだんだん外れていって…という。
佐藤:アドリブに見えるけど、実は稽古をちゃんとして息が合っているから面白いというね。昔の玉川良一一座みたいなあれだよね。
柴田:そうそう!(笑)
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佐藤:ああいうことこそ、技が必要なんですよね。言葉やフレーズだけで笑わせるんじゃなくて。
柴田:みんなで協力して面白くやれるといいなと思ってます。
大久保:ポカスカジャンが初めて全体公演に出た時に、佐藤さんと「ナマステボーイズ」を組んでインドの楽器を使ったダンスをやらせてもらったんです。その印象が強くて、また佐藤さんといろんな「ボーイズ」を組んで何かできたらいいなと。これはまだ喰さんに言っていないので、どうなるのかは劇場に来て確かめてください!
柴田:なかったら、「あぁ~ボツになったんだな」って(笑)。
梅垣:お客さんを巻き込んだスマホを使ったネタはやりたいと思っています(編集部注:取材当日の会見でこのネタを披露するも、思ったような盛り上がりにならず梅垣は少々凹み気味)。
佐藤:頑張れ!
大久保:ドンマイです!
梅垣:うるせえよ!
柴田:もうそっとしておいてあげてください(笑)。
――会見では喰さんからAIを使ったネタの提案がありました。
大久保:AIを使ったアレンジはもう取り込んでいて、相方のタマ伸也も結構やってるんですね。今は「このメロディーを演歌調にしてやってみて」と言われてもすぐにできるじゃないですか。もちろんAIには到底考えが及ばない出し物になるとは思いますけど。
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佐藤:ってことは、舞台上でアドリブで作れるわけだ。今日のご当地ネタを盛り込んだりして。
大久保:できます、できます。
佐藤:こんな風にいつも無駄話しながらネタを見つけていく感じなんです。
柴田:そういうことの中で、「お!それ面白いじゃん!」と始まってね。
昔はもっと時間があったし少人数だったから、稽古をやって、飲み屋に行ってそういう話をして。次の日稽古場でやってみて「失敗だったね」「呑んでるノリだけだったね」っていう繰り返しでした。
佐藤:なんか発明してる気がする時もあるんだよね。今までにないものを発明してる気がするんだよな。
柴田:ワハハの良さはやっぱりそういうところにあるんだろうなと思うんですよね。他のところに出演すると、台本があって、演出の人がいて、その人の世界のその通りにやる。その中でどのように自分らしさを出していくかっていうのが勝負だと思うんですけど、ワハハは本当に0なので、どうやって作っていくかっていう、まさに発明。
佐藤:俺、毎回稽古が始まる時に「どうやって作るんだっけ?」ってなる。
柴田:私も忘れてんの。「どうしたらいいのかな?」ってところからいつも始めるんですけど、でも毎回初めてのことに取り組むみたいな状態でいられるっていうのも良さではある。
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佐藤:前例がないからだよね。これとこれを組み合わせて、これを入れて、このレシピで美味しいものを作るには…といつも考える。
柴田:こういう風かな。いや、違う違う。じゃあこっちは中華風。いやいや、それだと当たり前だ…とか、変なほう、変なほうにみんなで行くんで面白いよね。
◆寒い季節の全国公演 体力づくりに余念なし!
――梅垣さんは今年初めてのアルバム『素晴らしき哉、我がシャンソン人生』をリリースされ、ポカスカジャンは結成30周年を迎えられます。活躍の場を広げ続ける皆さんの姿をどうご覧になられていますか?
柴田:すごいですよね。AIをもう使ってるっていうのにもびっくりしました。私はマイクを押して質問するやつも前に一度やったけど、ちゃんと聞き取ってくれなくてそれからもうやってないからね(笑)。
大久保:喰さんは、Siriにハマってたんですけど、答えてくれる女性の声に「君は偉そうだ!」って怒ってました(笑)。
――喰さんはAIやSiriにも率先して取り組まれたり、コンプライアンスに対しても時代に合った考え方をされたりと、時代の変化に柔軟に対応されていて驚きました。
柴田:喰さんってそういう人ですよね。本当に脳みそが若いなと思うんです。我々はこうやってきたんだから、これを貫いていくんだ!っていうのはあまりないんですよね。
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昔ワハハが過激なアイデアをガーッと出していったのも、そういうことをしないと君たちは目立たないでしょっていう考えからで。売れるためにそういう手法を取ったけども、いち早く喰さんのほうから過激なことは抜いていきましたからね。そういうところはちゃんと大人だなって思います。
――寒くなっていく季節に長丁場の全国ツアーとなりますが、何か気を遣われていることはありますか?
柴田:私はトレーニングをしています。
佐藤:俺は歩くのが好きなんで歩いてますね。あとは谷中銀座商店街で街頭紙芝居をやってるんですけど、2~3時間紙芝居をやりっぱなしで声を出すので、あれは体にいいのかもと思う。
梅垣:俺も軽く走ったりしてるかな。昔はヒールなんか痛くもなんともなかったし、ヒールで走ったら日本で一番早い!くらいに自信があったんだけど、今は履くだけで痛くなっちゃって。足が悪くなると膝が悪くなって、膝が悪くなると腰、腰の次は背中と痛くなってくる。
佐藤:職業病だ。
柴田:腰は大事よね。ストレッチをちゃんとしないと。
梅垣:そう! ストレッチは本当に大事。昔は全然思わなかったけど、今は本当にストレッチって大事だと思う。
大久保:僕はコロナ禍から毎日40分、4.5kmを結構早いペースでウォーキングしています。地方にもウォーキングシューズを持って行って必ず歩くくらい、もう趣味ですね。
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――それでは最後に、今回の公演を楽しみしているファンの皆さんへメッセージをお願いします。
佐藤:まだ何をするか分からないのに、来てください!というのも無責任な感じですが、自分たちが面白いと思ったものを皆さんにお届けします。それは自信を持って言えるので、ぜひ劇場で楽しんでください。
柴田:42年前から全く変わることのないこの姿勢。年はとってもまだまだバカをやれるぞ!この年でまだこれをやってるぞ!っていうのが素晴らしいことだと思っています。皆さんも気を楽にして私たちにまた会いに来てください。
梅垣:僕も含めてみんな年を取りましたし、お客さんも年を取ってきましたけど、同じ年代のみなさんに笑ってほしいという気持ちがあります。最近は娘さんやお孫さんと一緒に来てくださる人もいるので、いろいろな世代の皆さんに喜んでいただきたいですね。お客さんが笑ってる顔っていうのは本当にエネルギーになるので、また皆さんの笑顔に会えるのを楽しみにしています。
――締めは座長、よろしくお願いします!
大久保:先輩たちは自分のやっているワハハの舞台を観れないじゃないですか。でも僕は実際に観て「すげえ!」と思って入った人間なので、劇団員ですけど、ファンでもあるわけです。そんな僕がファンとしてワハハを観て言えるのは、今の日本にはワハハの笑顔こそが必要だということ。ぜひ皆さん笑いに来てください。
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(取材・文:渡那拳 写真:高野広美)
ワハハ本舗特別公演『最後のショービジネス』は、11月11日~15日東京・シアターサンモール、11月22日宮城・東京エレクトロンホール宮城、11月23日福島・とうほう・みんなの文化センター(福島県文化センター)、11月27日~29日大阪・森ノ宮ピロティホール、12月5日長野・大町市文化会館 エコーホール、12月6日富山・高周波文化ホール(新湊中央文化会館)、2027年1月14日鹿児島・宝山ホール(鹿児島文化センター)、1月16日・17日福岡・福岡国際会議場 メインホール、1月23日静岡・磐田市民文化会館「かたりあ」、1月31日群馬・メガネのイタガキ文化ホール伊勢崎(伊勢崎市文化会館)大ホール、2月5日~7日東京・シアター1010、2月13日愛知・豊田市民文化会館 大ホール、2月14日兵庫・神戸国際会館 こくさいホールにて上演。
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